『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』(著:伊賀泰代、ダイヤモンド社)という書籍名からは、一見、採用面接を受ける人、あるいは採用面接を行う面接官に読ませる書籍のように思われます。
しかし実際には、著者がマッキンゼー・アンド・カンパニーで採用マネージャーとして勤務していた経験から、採用基準のあり方を切り口に、若い世代がどのような資質を身に着けるべきなのかを説いている書籍です。
本書で目指したのは、「これからの時代にグローバルビジネスの前線で求められるのは、どのような資質をもった人なのか」という点、ならびに、「日本ではなぜそれらの資質が正しく理解されていないのか」という根本的な原因を究明することです。
引用元:『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』 4ページ
マッキンゼーの採用マネージャーとして一〇年以上にわたり働いた中で学んだこと、得られた知見をもとに、若い世代の日本人がこれから何を目指し、どんな資質やスキルを身につけるべきなのか、少しでも具体的に提示することができれば心より嬉しく思います。
引用元:『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』 5ページ
この記事では、本書の著者が考える若い世代に必要な資質、「リーダーシップ」についてご紹介していきます。
問題解決には、問題解決能力ではなくリーダーシップが必要
難しい問題を解決するために最も必要な能力は、問題解決能力ではありません。リーダーシップです。
難しい問題にぶつかったとき、問題の答えを導くための思考力であったり、テクニックを駆使して解決策を提案することが求められます。しかしながら、たとえ解決策が分かっても、それを実行に移し、問題を解決しないことには、解決策が分からないのと大差ありません。
大切なのは、解決策を実行するためのリーダーシップなのです。
家の外にまで溢れる大量のゴミを溜め込む迷惑な隣人が現れた時、その問題を解決するのに何が必要か、想像してみてください。紙と鉛筆を用意して、解決方法を考えることは可能でしょう。しかし、たとえ完璧な解決策を紙の上に書き出すことができても、問題は何ひとつ進展しません。問題を解決するには、それらの言語化された解決策のステップを、ひとつずつ行動に移していく必要があります。その時に必要になるのがリーダーシップなのです。
引用元:『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』 65ページ
リーダーシップはグループのメンバー全員に求められる
リーダーシップと聞くと、「グループのうち一人が持っていれば良い」だとか「同じグループにリーダーは二人もいらない」といった考えを持ってしまうケースも少なくありません。リーダーは一人で、他のメンバーは自身の主張を行わずただリーダーの指示に従うべきだと考えている日本人が多いようです。
しかし、本書の著者はそうではないと言います。
よくある誤った解釈としては、1つの組織に複数のリーダー(肩書ではなく、リーダーシップを発揮するメンバー)がいると衝突が起こり、混乱を招いてしまうといったものがあります。しかしこれは、リーダーの定義が適切ではないために起こってしまうのではないでしょうか。
この誤った解釈におけるリーダーは、自分の主張を強引に述べる人でしかなく、ただのわがままな頑固者です。一方、本書でいうリーダーとは、組織の課題解決や成果達成のために必要なことを進んで行う人を指しています。決して、人の話を聞き入れない強引な人ではないのです。
したがい、グループのメンバー全員がリーダーシップを発揮しても、成果達成に繋がらない衝突は起こりません。むしろ、各人がリーダーとしての自覚を持つことで、それぞれが直面した課題に対し、指示待ち族になることなく主体的に解決に向け行動する組織となるのです。
リーダーシップは今すぐ発揮するべき
マッキンゼー・アンド・カンパニーにおける、リーダーシップの訓練方法は、「できるようになるまで先輩からに学ぶ」ではなく「とりあえずやってみて、できないところだけを先輩に助けてもらう」スタイルだといいます。
つまり、今すぐリーダーシップを発揮して、上手くいかなかったところを次回改善できるように学ぶというやり方のです。そうすることで、できる人と自身との経験やスキルの差を強く意識することができるのです。その意識が、自身をできる人へと成長させる糧となります。
もしも「自分でできるようになるまで、先輩がやるのを後ろで見ている」というように訓練されていれば、こういった悔しさを感じることもありません。スキル不足の段階から自分でやってみろと言われるからこそ、彼我のスキル差、経験値の違いを強烈に意識させられるのです。
引用元:『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』 157ページ
おわりに
今回の記事では、『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』(著:伊賀泰代、ダイヤモンド社)から、問題解決のために必要な資質はリーダーシップであり、組織の全員に求められるということをご紹介しました。
今回ご紹介した内容は、本書のほんの一部でしかありません。
是非本書を手に取って、マッキンゼー・アンド・カンパニーで採用マネージャーとして勤務していた著者が考える、若い世代が身に着けるべき資質であるリーダーシップについて理解を深め、リーダーシップを発揮する人間になっていただきたいと思います。
コメント
突然のコメント失礼します。
なるほどという思いです。
早速本を購入してみます。
「リーダーシップ」を「主体性」と置き換えると、まさに腑に落ちる思いです。
今後も、ブログ読ませていただきます。
id:BullBull-Musao
ぶるぶるMusao様
コメントくださり、ありがとうございます。そのようなお言葉をいただけて、大変うれしいです。今度もコメント等いただけると、記事投稿の励みになります。