日本国内での新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受け、企業の採用内定取り消しが発生しています。
当然、内定を取り消された方にとっては、人生に大きな影響を与える一大事となってしまったことでしょう。特に、まだ社会に出たことがない学生の方は、大きな不安を感じているのではないでしょうか。
この記事では、社会人経験のある筆者の目線から、企業の内定取り消しについて考えてみたいと思います。
はじめに:適切な手順を踏んでいれば内定取消は法的に問題ない
企業が内定を取り消すこと自体は、適切な手順を踏んでいれば問題ありません。
内定を取り消す行為は、その内定取り消しが、「客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認することができる場合にのみ許される」と判例に示されています。
具体的に言えば、次の5つのような場合には内定の取り消しが社会通念上相当として認められると言われています。
①採用内定者が学校を卒業できなかった場合
②採用内定者が傷病により働くことができなくなった場合
③採用内定者が罪を犯した場合
④採用内定者が重大な虚偽の申告をしていた場合
⑤経営が困難になり、整理解雇が必要になった場合
今回の新型コロナウイルス騒動において発生している内定取り消しは、上記の⑤経営が困難になり、整理解雇が必要になった場合に該当するものだと考えることができます。
整理解雇というのは、事業を継続することが困難な場合に行ういわゆるリストラのようなものです。当然、整理解雇を行うに当たっては、いくつかのステップがありますが、ここでは割愛します。
余談ですが、2年度以上連続して内定取消しを行った企業には、厚生労働省の行政指導として、同一年度内で10名以上の内定取消しをした場合や、内定取消しの理由を十分に説明しない場合などには、企業名を公表することができるとしています。
当然、企業側もノーリスクというわけではありません。
結論:内定を取り消されて良かったのではないか
内定を取り消されてしまったこと、それ自体は、間違いなく予期せぬものだったことでしょう。しかしながら、2008年頃に起きたリーマンショック然り、予期せぬ事態は起こり得ます。
その予期せぬ事態を、少なからず予期してBCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)を立てておくのが、今後継続的に発展し得る企業なのでしょう。
そういった観点では、今回の一連の新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大騒動で、内定取り消しや経営破綻に追い込まれた企業は、どのみち近い将来淘汰される運命だったのかもしれません。
このような危機的な状況にあっても、問題なく事業継続できている企業も多くあります。それを考えれば、事業継続性の弱い企業への入社を避けることができたと捉えることもできます。
むしろ、内定が取り消されてしまった事実は変えようがないのですから、この事実を前向きに捉えて、次に進むための行動を起こすべきだと筆者は考えます。
おわりに:大事なのは、これからの行動
とは言っても実際問題、当初の予定が崩れてしまい、慌てて就職活動を再開した方も多いと思います。なんとか他の企業に就職できた方、就職活動が上手くいかず現在も今後の進路を迷われている方、様々おられるかと存じます。
現在どのような状況にあっても、確固たる目標に向かって行動することを止めてはいけません。
例えば、行きたい業界からの内定が取り消され、全く違う業界に就職した方。問題ありません。その業界でスキルを身に付け、転職をすればいいのです。焦る必要はありません。むしろ、当初予定より1つ多く業界を経験できるのです。
まだ就職が決まらず、悩んでいる方。自分を見つめなおす時間ができたのではないでしょうか。学生時代、浪人や留年をせずストレートで進級・進学されている方は、就職にあたって、当然ストレートでとお考えのことでしょう。しかしながら、社会人から見れば、それに大した意味はありません。むしろ、時間の有る学生のうちにこんなことをやっておけば良かった、と考えることもしばしばあります。
当然のことですが、就職が人生のゴールではないはずです。ゴールに向かって努力すべきことは、企業に入らなくてもいくらでもあります。
今回の新型コロナウイルス禍においても、特に影響を受けず、就職している人も多くいます。個々で事情は異なるため、一概に優劣はつけられないとは言え、自身と他者の違いについてもよくよく考え自己分析し、今後の行動に繋げていくことが重要だと考えます。
大事なのは、考えて行動すること。歩みを止めないこと。
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