大学生・大学院生の最大の難関「卒業論文」や「修士論文」。
特に多くの大学生にとっては、最初にして最後の研究・論文執筆かと思います。そのため、どうやって進めれば良いのか、なかなか掴めずに、どんどんと時間が過ぎ、気づけば締め切りギリギリ・・・なんてこともよくある話です。
この記事では、文系における卒業論文や修士論文について、どのように進めていけば良いのかを説明してきたいと思います。
筆者は、国立の大学院にて修論を執筆し、最も良い評価で修了しておりますので、その経験をシェアしたいと思います。
※ 本記事はブックマーク推奨です。
卒論や修論の大まかなステップ
文系における、研究から論文執筆までの大まかなステップは次の通り。
※「イメージ」の欄は、あくまでも雰囲気を掴むものであって、下記は、あまり質が高くないです・・・。
ステップ | 概要 | 説明 | イメージ |
1 | 研究の対象テーマを決める | まずは、どのジャンルで研究するかを定める。 | 「エレキギターについて」 |
2 | 文献レビュー(先行研究調査)をする | 大テーマに関する文献を調査し、今までの研究でなにが言われていて、なにが言われていないのかを把握する。 | 「日本においてエレキギターがどのように普及したのか、◯◯氏の研究にて素描されている。」 |
3 | 研究テーマを絞り込む | 先行研究でもまだ言われていないことをもとに、研究テーマを絞る。 | 「しかし、◯◯氏の素描では、特に□□の視点が抜け落ちており、明らかになっているとは言い難い。」 |
4 | 仮説を立てる | 文献や経験などをもとに、一旦、仮説を構築する。 | 日本での普及は、「海外ロックバンドの流行」、「日本のエレキギターブーム」、「日本の楽器メーカーの企業努力」が大きく関係しているのではないか? |
5 | 研究の問い(リサーチクエスチョン)を定める | 仮説に基づき、研究の問いを明文化する。 | 日本においてエレキギターはどのように普及していったのか ・海外ロックバンド文化の輸入は、日本にどのような影響を与えたか ・日本での「エレキギターブーム」の経緯と、その広がりはどのようなものか ・商業としてのエレキギターが普及にいかに貢献したか |
6 | 仮説や問いに基づき、データ収集をする | 文献研究や、実際にフィールドワークをしたり、実験を行ったりして、仮説を検証するためのデータを集める。 | ・文献研究や当時の映像資料などを総合的にまとめる ・当時の音楽マガジンの網羅的な調査/量的なまとめ ・ギターブーム真っ只中でプレーされていた方複数人へのインタビュー ・当時の日本のギター開発先行企業へのインタビュー |
7 | 研究をまとめる | 集めたデータをもとに言えることを検討し、仮説や研究の問いを柔軟に修正する。 | 普及については、海外ロックバンドの直接的な影響のみならず、先行した日本のあるバンドグループによる影響も大きいことがわかった。「海外ロックバンドの流行」と「その影響を受けた日本のバンド」、「それを取り上げたテレビなどのマスメディア」などがそれぞれ互いに影響を及ぼし合って普及していった様子が浮かび上がってきた。 |
8 | 研究をストーリー化する | 今までの研究内容をまとめて、ひとつのストーリーに仕立て上げる。 | 日本におけるエレキギターの普及について、どのように普及していったのか、◯◯氏の研究の素描を除き、ほとんど明らかになっていない。そこで、当時の資料研究や各方面の当事者へインタビューを行った。その結果、今まで◯◯とされていたが、実は、□□の複雑な相互作用による影響も大きいことが見えてきた。先行研究にて言われてきたことと重ねて考えると、日本におけるエレキギターの普及は、××のようにして広がっていったことが明らかとなった。 |
9 | 研究の含意を考える | 理論的な側面や、実務的な側面において、その研究にどのような含意があるのかを明示する。 ・理論的含意:今まで言われてきた理論に対して、その研究がどのように貢献したのか。 ・実務的含意:アカデミックな側面のみならず、その研究は実務(社会、ビジネス、日常・・・)にどのように貢献するのか。 |
理論的含意:日本におけるエレキギター普及の歴史的な変遷を、マスメディア含め、総合的な視点で整理したことにある。 実務的含意:日本におけるエレキギターの広がり方が明らかとなり、さらなる普及に向けたマーケティング戦略に資する。 |
10 | 論文を執筆する | 今までの内容を論文にする。 | – |
11 | 論文をスライドにまとめ、審査を受ける | 論文の内容をパワーポイントなどに簡潔にまとめ、発表し、審査を受ける。 | – |
卒論や修論の進め方に沿った記事紹介
卒論や修論の全体像の把握
まずは、今から作成する「論文」の完成形を把握しておきましょう。
文系論文には「型」がありますので、それに沿って進めていきます。
文献レビュー/先行研究レビューの進め方(ステップ2)
自身の興味対象が決まったら、まずは、その関心ごとについて今までどんな研究がされてきたかを確認する必要があります。
これを「文献レビュー」や「先行研究レビュー」と言います。
なぜ、過去の研究を把握しなければいけないのかと言うと、(自身の研究が、”研究”と認められるための)以下のような2つのルールがあるからです。
- 自身の研究は、過去、誰も行っていない新規性・独自性の高いものでなければならない
- かといって、過去のどの研究にも関連しない突拍子もないことを言えばいいわけではない
この2つを満たすには、自身の研究領域の先行研究を網羅的に把握し、その上で、自分はどのような研究ができるかを考えなければなりません。
この「文献レビュー」や「先行研究レビュー」の進め方について、以下の記事に詳しくまとめましたので、ぜひご覧ください。
詳細な研究テーマ決めと仮説構築の進め方(ステップ3〜5)
研究テーマの決め方は、次の文章に集約されます。
「研究は、先行研究からの積み重ね」ということを念頭に置きながら、過去の関連文献を読み漁る。その領域の全体像を意識しながら、まだ言及されていないこと(=穴)を探し、それを埋めるように自身の研究テーマを設定する。ただし、その研究テーマは、理論的にも実務的にも意義がある、と言うことができるようなものであることが望ましい。
これについて、詳細は下記にまとめてあります。
論文執筆の進め方(ステップ10)
集めたデータから言えることがまとまり、研究のストーリー化ができれば、いよいよ論文の執筆です。
効率的な論文の執筆や書き方については、下記をご参考ください。
また、おまけですが、論文の最後に付け加える「謝辞」については、次の通り。
おわりに
できれば、本記事をブックマークしていただき、研究に行き詰まった時などに見返すと良いのではないかと思います。
多くの人にとって、最初で最後になるであろう研究と論文執筆。手軽に済まそうと思えば、そうできてしまうかもしれませんが、せっかくの機会ですから、わからないなりにセオリーに乗っ取って真剣に向き合って、取り組んでみるのも良い人生経験なのではないでしょうか。
応援しています!
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